出し惜しみビジネス

僕が写真にのめりこむきっかけになったのは大学時代に植田正治の写真を見てからでした。

「パパとママと子供たち」の写真にかなり衝撃を受けましたね。

当時(1999年)は植田正治の写真集はほどんと出版されてなく、過去に出版されてたものは絶版、かろうじて岩波書店から出ていた「日本の写真家」シリーズとPARCO出版から出ていた2冊の写真集をためつすがめつ眺めておりました。

書店で検索すると写真集ではなく、連載してたエッセイをまとめた「私の写真作法」という本を発見し、暗室作業に対する思いなどを楽しみました。

そして章ごとに差し込まれる写真がまたイイんですよね。

「春を告げる光」「緑陰」「三郎日記」「X氏のいる風景」

3~4枚ずつ掲載されてるその他の写真をもっと見たくって見たくって…。

◎◎◎◎◎

時も経ち社会人になり、ある程度お金を自由に使えるようになってからちょうど植田正治の写真集発売ラッシュが始まります。

ヒスグラとのコラボや、小さな伝記などに特化した写真集などなど・・・。

植田正治のお孫さんである仲田薫子さんが祖父の写真をもっと世に出していきたいという意気込みからか、次から次へと色々な切り口から編集された写真集が発売し始めたタイミングだったのです。

ファンに成りたての頃、あまりの種類の少なさに飢えていたので、出れば出るだけ買っておりました。

しかしその仲田さんも若くして亡くなられてから、弟さんが出てきてまたまた出版ラッシュをされるのですが、残念な事に毎回毎回、代表的な有名な写真ばかりが掲載されてるんです。

ある日

植田正治の集大成!豪華写真集(16,000円!)が発売!

というタイミングで神楽坂でトークショーがありました。

職場の近くだったので行ってみたのですがE沢耕太郎氏と、妙にミニスカな50代の女性(出版社の方だそうで)が

「植田さんの家に行けばまだまだ未発表の写真が~」

「ホント世の中に出回ってる写真はまだまだ一部でして~」

とヘラヘラ笑いながらトークしてる始末。

正直(何だかなぁ)と思う気持ちを抑えつつ、質疑応答のときに手を挙げたら指名されたので思わず本音を言ってしまいました。


「今回の写真集は決して安いものではないです。でも買います。中身を拝見させて頂いたので買う代わりに言わせて欲しいんですけど、毎回毎回、同じ写真ばかり掲載されてるんですよね。未発表の写真が入ってても全体の1割もないくらいでして・・・。未発表の写真がまだまだある、なんて俺達だけが知ってる的な話は、我々消費者にとっては何にも面白くないんですよね。出し惜しみせずに新しい写真集にはちゃんと未発表の作品もたくさん盛り込んで欲しいんですよ。」


・・・両氏や司会など、関係者が苦虫を噛み潰したような顔でトークショーが終わりました。

そりゃそうだわな。

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植田正治に関する写真集は当分買い止めにしようと思った次第であります。


Photographer Yu Kamohara

写真家 蒲原 裕 朧写真ライフ 確固たる信念を持ち 表現を曖昧に

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